日本は成功しすぎたEUである(映画と思想のつれづれ)

明治の国会には藩の数ほどの通訳が当初いたそうです。律令制の昔から明治までの日本は連合国家みたいなもんだったんだなあ。

240年目の古事記伝 第九回 世界の創造と神の主体性(産巣日神論③)

高御産巣日神(たかみむすひの神)と神産巣日神(かみむすひの神)とは、タイプの異なる産巣日神(むすひの神)です。それらは独神(ひとりがみ)であり、その働きは、全く個別に考えなければなりません。

唯一無二の存在であるはずの産巣日神(むすひの神)が一神ではないということは、一神の産巣日神(むすひの神)だけでは、いまの世界に至るには十分ではなかったことを意味します。

「高御(たかみ)」産巣日神(むすひの神)だけの世界では世界には欠けているものがあるために、「神」産巣日神(むすひの神)が誕生したのです。

 

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240年目の古事記伝 第八回 複数の太陽神(産巣日神論②)

 天之御中主神(あめのみなかぬしの神)が、特定の場所、高天原に誕生したことによって、日本以外の神話に見られるような、特定の神を頂点としたピラミッド的な秩序や、一神を中心とした放射状の曼陀羅構造ではなく、高天原に次々に誕生する神々が等しく中心の神々となるような世界が創造されていくことが決定づけられました。

天之御中主神(あめのみなかぬしの神)の次に誕生するのは、高御産巣日神(たかみむすひの神)、その次に神産巣日神(かみむすひの神)」が誕生します。この二柱は、神名の後半部分が共通しています。

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240年目の古事記伝 第七回 233文字の構造(産巣日神論①)

 ここまで、「天地初発」「天之御中主神」「高天原」と考察を進めてきました。
その結果、『古事記』の「天地初発」は、『日本書紀』の「天地開闢」や『旧約聖書』の「天地創造」とは全く異なる世界創生譚であることがあきらかになりました。

それは、天と地とが自らの意思で発(あら)われた時に、天之御中主神高天原に誕生したことによって、その後に高天原に次々に誕生する神々(=天つ神)が等しく中心の神々となるような世界が創造されるというものでした。

天之御中主神とそれに続く神々との関係は、日本以外の神話に見られるような特定の神を頂点とするピラミッド的な秩序や、一神を中心とした放射状の曼陀羅構造ではありませんでした。

そして、天之御中主神の次には、高御産巣日神(たかみむすひの神)と神産巣日神(かみむすひの神)が誕生するのですが、これらの神々の理解のためには、最初に天地初発233文字の構造を把握しておくことが必要となります。

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240年目の古事記伝 第六回 高天原という思想(「天之御中主神」論②)

 「天地はじめてあらはしし時、高天原に成れる神の名は天之御中主神」(天と地だけが始動し、それ以外の世界の構成要素はその存在を明らかにしていない、そんな時に高天原に最初の神があらわれました)という文章から『古事記』は始まります。

天之御中主神(あめのみなかぬしの神)は、高天原に誕生したのですが、この高天原は『日本書紀』本文には記述がありません*1。この『古事記』に独自の高天原に注目し、天之御中主神高天原に誕生したことを必然と見なすとき、『古事記』のコスモロジーは展開していきます。

*1:日本書紀』に高天原が登場するのは本文ではなく一書に曰くとしてのみです。その際も、天地開闢の始原の神々(國常立尊と國狹槌尊)とは区別され、高天原は曰天御中主尊(あめのみなかぬしの神に相当)、高皇産靈尊(たかみむすひの神に相当)、神皇産靈尊(かみむすひの神に相当)とセットで記述されています(「一書曰、天地初判、始有倶生之神、號國常立尊、次國狹槌尊。又曰、高天原所生神名、曰天御中主尊、次高皇産靈尊、次神皇産靈尊。皇産靈、此云美武須毗。」)ので、この一書に曰くの記述は『古事記』の記述と矛盾しません

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240年目の古事記伝 第五回 『古事記』と『聖書』のコスモロジー(「天之御中主神」論①)

古事記』に最初に登場する神は天之御中主神(あめのみなかぬしの神)ですが、これまでの『古事記』研究では、この神にあまり注意が払われてきませんでした。

古事記』本文中に最初の1回しか登場してこないので、さして重要な神ではないだろうと思われてきたのです。しかし、神話の冒頭が重要で無いというのは不自然です。ユダヤ教では『旧約聖書』の冒頭部分をトーラーと言って後段部分と区別し特別に重視していますし、小説は冒頭が重要だということは誰もが指摘するところです。

天之御中主神を軽視することは、『古事記』を聖典でも文学でもないと言うに等しい行為なのですが、そのような読み方が『古事記』のこれまでの読み方の主流に居座っていたのです。

ここでは、冒頭を軽視するといったことをせずに、聖典や文学に対する普通の態度で『古事記』を読んでみるとき、はじめて立ち現れてくる天之御中主神の意味について考察していきたいと思います。

それは、「最初の1回しか登場してこないから重要な神ではない」というこれまでの常識とは正反対に、「重要な神なのになぜ最初の1回しか登場してこないのか」という問いを立て、その答えを『古事記』の中に探し当てるような読み方です。

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『ゴースト・イン・ザ・シェル』に見るアイデンティティクライシスの日米差

★★★

士郎正宗の原作漫画『攻殻機動隊』(以下、士郎攻殻と略す)ではなく、押井守監督の映画『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』(以下、押井攻殻と略す)の実写化である本作品は、主人公たる少佐の苦悩を押井攻殻とは別のものに変えてきた。その苦悩は、同時期に公開された『ブレードランナー2049』の主人公レプリカントKの苦悩と同期する。

この改変によって、本作は過去のどの攻殻機動隊/GHOST IN THE SHELLの焼き直しでもない全く新しい攻殻機動隊『ゴースト・イン・ザ・シェル』になったのだが、この「苦悩」の換骨奪胎は、アメリカ映画が、ファッションとして以上には『攻殻機動隊』を自らのものとして取り込むことはできないという信仰告白になっている。日本的なゴーストは、ハリウッド的なゴーストに融合できなかったのだ。(以下、ネタバレほぼなし)


『ゴースト・イン・ザ・シェル』 本予告

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『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』はザッカーバーグの秘密でもある

★★★★

52歳から世界企業を起業した男(=マクドナルド創業者)の物語を知りたいなと思っていたところにAmazonプライムで本作を見つけました。見る前には予想だにしなかったとても面白いことに気づいてしまったので、ちょっと書いておこうと思います。それはマクドナルドとFacebookとの意外な一致点です。(以下ネタバレあり)


映画『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』予告

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