日本は成功しすぎたEUである(映画と思想のつれづれ)

明治の国会には藩の数ほどの通訳が当初いたそうです。律令制の昔から明治までの日本は連合国家みたいなもんだったんだなあ。

『人生スイッチ』は良質なプロレス興行のような傑作オムニバス

 まったく期待していないで見た映画が、ことのほか良作だったときには、とても得した気分になるものである。この映画も、そんな素敵な出会いをした映画のひとつ。出会いの場は、amazonプライム。これは掘り出し物でした。

 唯一欠点があるとしたら、邦題。「人生スイッチ」では、人生訓めいた濃厚なドラマを想像してしまう。本作は、「ブエノスアイレスぶち切れ奇譚」くらいがふさわしい破天荒な大人のブラックジョーク集なのである。

 特にラストを飾る6作目は、名匠クストリッツァ監督作品にもつながるラテンの結婚式のド迫力に目を奪われる。必見だと思う。


「人生スイッチ」予告30秒

 

 ところで、この作品、構成がプロレス興行によく似ている。第一試合で観客の心をつかみ、途中の試合で緩急を付け、メインできっちり魅せる。この構成の妙は、プロレスファンならニヤリとしてしまうだろう。

 

 タイトルの話にもどると、『ブエノスアイレスぶち切れ奇譚』だとエキセントリック過ぎるかもしれないので、英語題の『WILD TALES』(ワイルドな物語)から、邦題を『ワイルドストーリーズ』くらいにして、スギちゃんあたりにプロモーションをしてもらったらよかったのにと思う。なにせ、本国アルゼンチンでは、あの『アナ雪』を上回る大ヒットをかましたそうだ。日本でだって、それなりに力を入れて宣伝すればスマッシュヒットくらいにはなったと思う。そこまでプロモにお金をかけられなかったら、大森隆男と征矢学のゲットワイルドを起用すれば、プロレスファンには響くだろう(観客動員数にどれほど貢献するかは未知数だが…)。

 

さて、各試合結果は次のとおり。ややネタバレなので、以下は映画を見終わってから感想合わせに参照するのがいいかもしれません。

 

人生スイッチ(字幕版)

人生スイッチ(字幕版)

 

 

第1試合「おかえし」★4 つかみとして文句なし。短い尺が効いている。

第2試合「おもてなし」★2 このオムニバス、なんでもありなんだなと分からせてくれる。プロレスで言うと凶器攻撃による失神KOみたいな。

第3試合「エンスト」★3 計算された中庸な試合。中庸だけど平凡じゃない。こういう作品が中程にくるのがプロレス興業っぽい。葛西純DDTのリングでする試合みたいだ。葛西純は、あの染谷将太菊地凛子夫妻が尊敬していると言ってはばからない*1熟練のレスラーです。DDTはAbemaTVでも見られる文化系プロレス団体です。

第4試合「ヒーローになるために」★4 最後の最後にラテンと日本人の文化の違いが出ていて凄く好き。このフィニッシュホールドは日本人じゃできない。でも、タイトルがネタバレなのは激しく不満。これじゃ平田*2や石沢*3や山田*4がマスクをかぶらずに試合をするようなもん。「レッカー」くらいのタイトルにして欲しかった。

第5試合「愚息」★2 メインとセットのセミファイナル。この作品が抑えたテンポなのでメインが生きてくる。関節技の応酬をじっくり見ていたら乱入で終わるみたいな感じの短編映画。

第6試合「Happy Wedding」★5 最高だ!ネタバレしませんので是非見て下さい。ブラボー!!ブラーバ!!

 


2016.12.19 全日本プロレス GET WILD 世界最強タッグ決定リーグ戦優勝一夜明け会見

 

*1:

KAMINOGE vol.45―世の中とプロレスするひろば デスマッチ!葛西純×染谷将太

KAMINOGE vol.45―世の中とプロレスするひろば デスマッチ!葛西純×染谷将太

 

*2:スーパーストロングマシンなど。マスクマンの日本における地位を爆上げした功労者。しょっぱい試合はやりません。

*3:ケンド-・カシン。総合格闘技の試合でも実績を残すインテリあまのじゃく。

*4:獣神サンダー・ライガー。日本よりむしろ海外での方が知名度が高いレジェンド。