『ダークナイト ライジング』を見てきました


クリストファー・ノーランバットマン三部作の最終章『ダークナイト ライジング』を見てきました。『バットマン』(1989年)と『バットマン・リターンズ』(1992年)が好きな小生としては、クリストファー・ノーラン版のバットマンにはいまいち乗れずに三作目を迎えてしまいました。


でも、アン・ハサウェイがデビューする前の小さな女の子だったころからなりたかったキャットウーマンを、念願かなってどう演じているのか興味津々で、やっとこさIMAXシアターに日曜の朝一番で見に行ってきました。


キャットウーマン、よかったですよ。マイケル・ケインもよかった。ゲイリー・オールドマンもよかったです。でもまあ、映画館を出た足取りは重かったですね。どうもクリストファー・ノーランは奇矯の者への愛がないようです。以下、完璧なネタバレですので、未見の方は絶対に見ないようにして下さい。また、私を個人的に知っている人で、『ダークナイト ライジング』はよかったなあ、と思っている人も絶対に読まないで下さい。絶対ですよ。


ネタバレまで10


9


8


7


6


5


4


3


2


1



0 <以下、ネタバレ注意(シネスケに書いたコメントを転載)>


CinemaScape/Comment: ダークナイト ライジング


トラウマを抱えながら生きにくい人生を生きている人は、時にやりすぎちゃったり、人に迷惑をかけてしまったり、そうでない人から見たら理解できない人生を送っているわけです。


そういう人が全くいなくなれば、世の中はもっとわかりやすく、平穏無事になるのです。


でも、そんなことは実際の世の中ではありえません。だから希望を映画にしてみました。世の中から理解できない人がみんないなくなる希望です。


バットマンは、なんだかよくわからないトラウマを抱えたコスプレ野郎です。だから、誰からも理解されず犬に追われて引きこもっていました。


今回、ベインが現れます。こいつは、いったいどんな動機があってゴッサムシティを破滅させようとするのでしょう。常人には理解できませんね。だからあっさりキャットウーマンに爆殺されちゃうことにしちゃいましょう。


キャットウーマンは、なぜあんな格好をして人のものを盗むのでしょう。キャットウーマンは美人なので、合理的な理由をつけてあげましょう。個人情報がデータベース化されて過去が消せないので、改心してもまともな職につくことができず、仕方なく変装してこそ泥家業を続けているということにして、そのことを自らの口で観客に説明させてあげましょう。


ミランダは親父の遺志を継いでゴッサムシティを破滅させようとします。理解しがたいファザコンですね。こんな奴、必死の思いで穴から這い出ても、人生変わるわけありませんね。つかの間の夢をみさせたあとは、あっさり死んじゃう設定にしちゃいましょう。女優さんのルックスにちょっと勝間和代が入っているのは、これは単なる偶然です。いや、全然似ていないと思いますよ、別の作品では。「結局、女はキレイが勝ち」、アン・ハサウェイに勝てるはずはありません。


あ、でもトラウマを抱えた人をみんな否定しちゃうわけじゃないですよ。逆境をバネに変えすぎて、はた迷惑な金持ちなんかにならずに(金持ちは金持ちってだけでむかつきますよね?)、変な夢なんか見ないで堅実に公務員やってる奴は立派です。ロビンはそういう設定にしておきましょう。俳優はちょっとダン・ヘンダーソン似な人を起用しましょう。人生は闘いです。でも闘いにグレイシーみたいな大仰な物語を持ち込まれては迷惑ですし、野蛮人が成り上がられても困ります。ここはきっちり過去を清算して、まじめにジ・アメリカン・アスリートとして頑張る彼に未来を託しましょう。UFC見てない人には解らなくてもいいんです。大ヒット映画にはマイナーネタもスパイスとして必要ですから(って、似てねーよと思った皆さん、ごめんなさい)。


で、バットマン。やっぱりトラウマは死ななきゃ治らないってことをみんなに教えてあげなくちゃ。トラウマ持っててナルシスな奴は、よくわからないから、よくわからない悪人に刺されて、最後はナルシスに自死ってのがいいよね。中性子爆弾はさ、原水爆と違って物はそんなに壊れないで生物だけ死ぬの。でも普通の人が死んじゃうのは困るから変人だけが死んじゃうような場所で爆発する設定にしておくね。ミランダもブルースも、希望の青空を見ながら、他人には成し遂げなかった脱獄を遂げるんだけど、幽閉囚が見る希望なんて本当の希望じゃないんだよってメッセージも織り込んでおかないとね。石の壁から希望の青空が見えるってのは、修道院建築の中庭設計のモチーフなんだけど、カソリックをそれとなく否定しておくのもアメリカっぽくていいよね。

    • -


と、まあ、ちょっとこれはないよなあと思って劇場を後にしたわけです。アン・ハサウェイキャットウーマンだけはもっと見てみたいと思いましたけど。★3はキャットウーマンに。


でもねえ、絶対別の監督で次回作もありますよ。ここまでやられちゃったら次回はトラウマの逆襲しかない。トラウマたちが根絶やしにされたがゆえの平和なんて、受け入れないのが熱心なバットマンの観客でしょう。バットマンの死があからさまには描かれなかったのは、クリストファー・ノーランの美学なのか、配給会社の都合なのかはわかりませんが、バットマンはトラウマを抱えた観客の怨念で必ずや甦ること必至です。そのためのあのラストだと思わないとやってられない。中性子爆弾は水中で爆発させてこそ威力を押さえ込めるはず。空中で自爆するほど、兵器に熟達したブルースが無知なはずはありません。それに、せっかく死を恐れる強さを身につけたのに、あっさり死んだら意味がない。合理的に描かれた作品は、その合理性がゆえに怨念の埋葬に失敗するのです。次回のバットマンは絢爛豪華トラウマ大爆発でお願いします!って、それじゃあティム・バートンか。


(2012.8.26 ユナイテッドシネマとしまえんにてIMAX鑑賞)


★★★☆☆(奇矯なる者への愛が足りない)