レアもの自慢6:『水牛楽団』高橋悠治、他
■高橋悠治氏といえばエリック・サティだが…
高橋悠治というピアニストを知っている人には別にレアものではないだろうし、知らない人にはレアもの自慢しようがない。『水牛楽団』はそういう作品である。
高橋悠治のピアニストとしての代表作は、一連のエリック・サティの作品集だと思う。1976年から80年にかけて収録されたこのサティの作品集は、まるでその後のバブル経済を体験してきたかのように寂寥感のある爛熟味に溢れている。100年強前のフランスの文化の爛熟の中に生まれたサティの作品を高橋氏以上に現代に甦らせることができたピアニストは、私の聴く限り世界にもいないと思う(ちなみに私は高橋悠治の弾くバッハは苦手である)。とにかく心に沁みるサティの演奏である。
そんな高橋氏は、他に二つの全く異なる音楽家としての顔を持っている。一つは現代音楽の作曲家としての顔で、もう一つが水牛楽団という民衆音楽楽団の主宰者としての顔だ。
私は、現代音楽の方は不勉強で聴いてもよくわからないので、現代音楽の作品群については何も書くことができない。
■各国の民衆の抵抗歌を演奏する『水牛楽団』
水牛楽団は、1978-85年に活動していた楽団で、楽団自体はもうないが、今も水牛の名前はサイト名として生きている(suigyu 水牛)。
この水牛楽団による『水牛楽団』というアルバムは、アジアを中心とした各国の民衆の抵抗歌を、ケーナ(西沢幸彦)、タイコ(八巻美恵)、ハルモニウム(福山伊都子)、大正琴(高橋悠治)、歌(福山敦夫)で演奏したもので、サティの演奏に伺える洗練とは真逆の演奏である。
楽団名のもととなったタイの生きるための歌を代表する「人と水牛」、パレスチナの難民キャンプの子供たちが書いた願い事に曲を付けた「パレスチナの子どもの神さまへのてがみ」、1980年に金大中氏が東京で拉致されたときに現場に落ちていた手帳に書かれた文章に曲を付けた「時がくれば」など全17曲が収められている。
Youtubeで首相官邸前のデモの様子の映像を見ていたら、私の頭の中で、ふいに水牛楽団が演奏を始めたのだった。
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水牛楽団 - CDJournal←曲名はこちらから
官邸前のデモの様子
素晴らしいサティの演奏
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