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レアもの自慢4:『KAMINOGE』東邦出版


■人生をサバイバルしている人を取り上げるプロの創るミニコミ
今回のレアもの自慢は雑誌『KAMINOGE』である。大きな本屋やamazonには売っているので、雑誌自体はマイナーではあるものの特にレアと言うほどのものではないのだが、創刊号から手元にあるので、レアもの自慢として紹介したい。


創刊の時から気に入って買い始めることができた雑誌というのは、社会派自動車雑誌『NAVI』(1984年2月〜2010年に廃刊)、サブカル誌『Quick Japan』(1993年夏〜現在も刊行されているがその後、私がおっさんになってしまったので購読停止)、男性誌を隠れ蓑にした政治経済誌『サイゾー』(1995年5月〜現在も刊行されているがいつのころからかなんとなく定期購読を停止)に続く4誌目である。『KAMINOGE』(2012年1月創刊〜)は、どういう雑誌かというと、なんというか人生をサバイバルしている人を斜めの視点で取り上げているプロの創るミニコミ誌のような雑誌である。先の3誌にピンとくる人には面白い雑誌だと思う。


始めてジュンク堂の渋谷東急本店店に行ったときに、目立つように陳列されていて、思わず手に取ったのがこの雑誌との出会いだった。角川春樹氏の娘である角川慶子女史が、ニコラス・ペタス氏や掟ポルシェ氏を講師にした保育園を開園したことをきっかけとしたインタビュー記事が載っていて、その編集の視点の面白さに惹かれて毎号買うようになってしまった。


■愛にあふれた対談に落涙
その最新号が今週発売された。特に面白かったのは、たけし軍団玉袋筋太郎カンボジアに国籍を変えて五輪マラソン出場を狙った猫ひろしとの対談と、極地生物学者長沼毅准教授のトンパチさを掘り起こすインタビュー記事である。


玉袋筋太郎猫ひろしの対談では、読んでいるうちに思わず落涙してしまうほどだった。TVの会社に勤めているくせにTVをあまりみない私は、芸能事情にうとく、猫ひろしも、そういえば五輪出場のために国籍を変えてバッシングされているらしい芸能人がいたなくらいの知識だったのだが、玉袋氏のみごとな対談術で、素晴らしい対談という作品になっている。猫氏はもと玉袋氏の運転手だったそうだが、玉袋氏の猫氏へのエールが、ちゃんと対談という仕事を成立させた中で伝わってきて、もう名人芸というしかない。ぜひ買って読んでみて欲しいが、冒頭だけ引用する。

KAMINOGE 今日は玉ちゃんがカンボジア人のお友達を紹介してくれるということで、伺わせていただきました(笑)。
玉袋 そうなんだよ。やっぱり『KAMINOGE』も世界に向けて国際的になってほしいと思ってさ。で、こいつがカンボジア人の友達なんだけど。
 チュムリアップ・スオー。
KAMINOGE お、カンボジア語ですね(笑)。
玉袋 でも一応、元・日本人なんだよな?
 旧日本人です。
玉袋 旧日本兵みたいなもんだから。「カンボジアから、恥ずかしながら帰ってまいりました!(敬礼)」ってな。
(『KAMINOGE』vol.7 p.48より)


なんという毒舌、なんという愛にあふれたつかみだろうか。この調子で玉袋氏主導で対談が進行していく。売れっ子芸人ともとその運転手というよく知った間柄なのに、馴れ合いでなく、個人として相手を敬し対談を芸として成立させる。ホウキともプロレスができるアントニオ猪木が、旧ソ連の五輪メダリストアマレスラー、サルマン・ハシミコフと感動的な試合を成立させた、究極のリング芸を思い出してしまった。


■「生命そのものをつくってみたい」学者の実像
続いて、長沼毅氏。この人も科学界のインディージョーンズとしてよくTVに出演しているらしいのだが、TVを見ない私は、著作でしか知らなかった。ただ、極地に生息する生物の研究を通して生命の起源を探求する氏の著作は興味深く、新刊が出ればチェックする学者の一人ではあった。『KAMINOGE』は、この人にインタビューするのに柔道というキーワードから斬り込むという荒技で、極限学者としての苦労、極限学者になるまでのトンパチなエピソード、「生命そのものをつくってみたい」という夢まで語らせてしまう。


いい雑誌にめぐりあった。感謝。


■『KAMINOGE』最新号

KAMINOGE [かみのげ] vol.7

KAMINOGE [かみのげ] vol.7


■『KAMINOGE』創刊号

KAMINOGE [かみのげ] vol.1

KAMINOGE [かみのげ] vol.1


■最近読んだ長沼毅氏の著作

世界をやりなおしても生命は生まれるか?

世界をやりなおしても生命は生まれるか?


■最初に読んだ長沼毅氏の著作

形態の生命誌―なぜ生物にカタチがあるのか (新潮選書)

形態の生命誌―なぜ生物にカタチがあるのか (新潮選書)

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