日本は成功しすぎたEUである(映画と思想のつれづれ)

明治の国会には藩の数ほどの通訳が当初いたそうです。律令制の昔から明治までの日本は連合国家みたいなもんだったんだなあ。

映画評

『スパイダーマン/ホームカミング』は、間テクスト性で味わう

大人の鑑賞に堪える特撮ヒーローものを開拓し、それを常識化してしまったマーベル作品群ですが、少し大人に寄りすぎたという反省からか、本作は学園ヒーローものになっています。 新スパイダーマン、アイアンマンと共闘!『スパイダーマン:ホームカミング』…

『キャプテン・マーベル』は能力社会をチキンレースから解放する処方箋だ

『アベンジャーズ/エンドゲーム』が公開間近とあって、『キャプテン・マーベル』を観に行った。 「キャプテン・マーベル」日本版本予告

『蜜のあわれ』と老いと性

はるか昔、中高生時分に室生犀星の小説が好きだったこともあり、実写化に興味を持ちつつも、文学作品の映画化なんてどうせ失敗するんだろうなと冷ややかな気持ちがあって、ほんとは石井岳龍監督作ということでちょっとだけ怖いものみたさはあったけど、本作…

『イングロリアス・バスターズ』に見るタランティーノ作品のAI性

これまでタランティーノ作品は趣味ではなかった。『キル・ビル』とか『デス・プルーフ』とか。過剰なんだけど寸止め感がある、やり過ぎてるはずなのに、ちっともやってくれてない感じがして、見終わったあとにフラストレーションが残ってばかりいた。 だから…

『人生スイッチ』は良質なプロレス興行のような傑作オムニバス

まったく期待していないで見た映画が、ことのほか良作だったときには、とても得した気分になるものである。この映画も、そんな素敵な出会いをした映画のひとつ。出会いの場は、amazonプライム。これは掘り出し物でした。 唯一欠点があるとしたら、邦題。「人…

『ゴースト・イン・ザ・シェル』に見るアイデンティティクライシスの日米差

★★★ 士郎正宗の原作漫画『攻殻機動隊』(以下、士郎攻殻と略す)ではなく、押井守監督の映画『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』(以下、押井攻殻と略す)の実写化である本作品は、主人公たる少佐の苦悩を押井攻殻とは別のものに変えてきた。その苦悩は、同時…

『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』はFacebook社の秘密でもある

★★★★ 52歳から世界企業を起業した男(=マクドナルド創業者)の物語を知りたいなと思っていたところにAmazonプライムで本作を見つけました。見る前には予想だにしなかったとても面白いことに気づいてしまったので、ちょっと書いておこうと思います。それはマ…

『ブレードランナー2049』の限界と矛盾

★★★ 『ブレードランナー2049』は『ブレードランナー』の続編として完璧だった。ストーリー以外は。(以下ネタバレあり) 映画『ブレードランナー2049』日本版予告編

テイストがアメリカン・ニューシネマだった『LOGAN ローガン』

★★★ テイストがアメリカン・ニューシネマな感じで驚いた。今のアメリカはベトナム戦争敗北時と似た精神状況に置かれているのだろうか。 映画「LOGAN/ローガン」インターナショナル版予告(字幕版)

『君の名は。』は思想したか

★★ ボーイ・ミーツ・ガールものとしては楽しい。だが、エヴァやマトリックスがキリスト教をギミックとして使いこなしたように神社の設定を活かせていたら、もっと傑作になったのにとの思いも残る。(以下ネタバレあり) 「君の名は。」予告

『シン・ゴジラ』と石原さとみの英語のリアルと大国主(オオクニヌシ)と

★★★★ 偶然にも『シン・ゴジラ』公開前の過日、とある歴史ある神社の巫女さんと会話する機会があり、あの偉大なるゴジラのテーマの作曲者である伊福部昭氏は、代々神主の家系であり、先祖をたどると大己貴命(オオナムチノミコト)に行きあたることを知りまし…

『エクス・マキナ』と日の丸

★★ 2014年の冬にオンラインマガジンのwiredの記事(『Ex Machina』:美しく強力なアンドロイドとの三角関係を描く映画(予告動画あり)|WIRED.jp)でこの映画を知って、以来日本での公開を待ちわびて、ようやく先日劇場鑑賞してきました。 その間、欧米での…

『アナと雪の女王』が示すアメリカの現在と未来

昨日家族で『アナと雪の女王』を見に行ったのでその感想を書いてみようと思います。 アナと雪の女王 - 予告編 以下ネタバレ含みます。 実は先に見に行った友人の話しを聞いて、勝手に抑圧と解放の物語だと思っていました。松たか子の歌はいいけれど、日本語…

『ローマでアモーレ』に笑った笑ったでも泣けたよ

死を意識したウディアレンが葬儀屋と歌い上げる凡人の幸せと愛と人生。 以下ネタバレあり。 映画『ローマでアモーレ』予告編 キリストじゃない凡人は復活しないんだよね。前衛的なオペラの演出に人生を懸けてきたウディアレン扮するジェリーにとって引退は死…

『アイアンマン3』は、恋するフォーチュンクッキーだった

恋するフォーチュンクッキー。(←このネタ誰かが書くかと思ったのですが、ベタ過ぎたのか誰も書いていないようなので書きます。) マーベル『アイアンマン3』予告編

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』は、やっぱりQ文書だった!?

「序」「破」ときて「Q」ですか。死海文書をネタとして扱ったエヴァだからQは当然Q文書だろうなと思って見たらやっぱりそうだった。期待を裏切らない期待の裏切られかたに★5です。ということでQ文書について書きます。 エヴァンゲリオン新劇場版 Q 最新予告…

『ダークナイト ライジング』に足りぬ奇矯なる者への愛

クリストファー・ノーランのバットマン三部作の最終章『ダークナイト ライジング』を見てきました。『バットマン』(1989年)と『バットマン・リターンズ』(1992年)が好きな小生としては、クリストファー・ノーラン版のバットマンにはいまいち乗れずに三作目を…

『キック・アス』、夢見る時代は過ぎて。

映画は、現実以上に現実を現す。特撮ヒーロー物から超現実を取り除いた本作は、痛くて苦くてキッチュでスピード感溢れる「現実」の戯画となった。 特撮に夢を見る時代は過ぎてしまったのか。そうかもしれない。 映画『キック・アス』予告編 世界を守るスーパ…

『ソーシャル・ネットワーク』は燃える集団だったのか

ちょっと前に会社の同僚と映画『ソーシャル・ネットワーク』を見に行った。とても楽しんだけれど、映画全体の感想はいろいろなところでいろいろな人が書いているので(実は私もcinemascapeに書き込んでいる*1)、最も印象に残ったエピソードについて書く。映…

『告白』と女と殺人

『告白』を見に行った。スタイリッシュで面白かった。が、この映画にテーマがあるのかないのか最後までわからなかった。以下、この映画のテーマと思われるものについて以下に語ります。映画「告白」劇場予告

『空気人形』を芝居小屋で見たい

なんか無性に映画が見たくなって、先週の土曜日に用事の合間に時間を作って是枝監督の空気人形を見に行った。『空気人形』予告編cinemascapeにこんなようなの書いた。 「空気人形」は、大人のおもちゃの人形が心を持ってしまうというお伽噺だ。人の目線で描…

『ガチ☆ボーイ』は本物のプロレス者である

先週末出社したので今日は代休。TSUTAYAでDVDを借りて見た。佐藤隆太の出世作である。結構ボロボロ泣いてしまった。ガチ☆ボーイ (プレビュー)ついついツァラトゥストラはかく語りきにでてくる綱渡師のエピソードなんかを思い出して、cinemascapeにこんなよ…

『アイアンマン』は大人の映画だ

スパイダーマンシリーズのように、ぐだぐだ悩むガキんちょがヒーローなアメコミ映画にうんざりしていた小生にとって、このおっさんヒーローは意外と響きました。大人というものは、内面のフクザツさを表に出さず、単純に行動するものなんです。過去に悩まず…

『崖の上のポニョ』のソースケはなぜ両親を呼び捨てにするのか

ソースケは、母ちゃんをリサと呼び、父ちゃんをコーイチと呼ぶ。これは物議を醸すだろうなと思って映画館から帰って「ポニョ 呼び捨て」とググったら案の定あちこちで議論が始まっていた。宮崎さんはしてやったりだろうな。というのも、宮崎駿は、ソースケが…

『ダークナイト』を反転させたらビル・ゲイツの人生になった

本作はクリストファー・ノーラン監督のバットマン2作目である。だが、タイトルにバットマンが入っていない。 名は体を表すではないが、本作は別にバットマンシリーズである必要のない作品になってしまっている。 ジョーカーが主役のバットマンを喰ってしま…

『攻殻機動隊2.0』に想う機械の身体とジェンダー

本作は、1995年に公開された押井守監督の『攻殻機動隊 ーGHOST IN THE SHELLー』の一部改訂版である。一部というのは、人形使い役の声優の変更(家弓家正から榊原良子)と、音響の全面刷新、作画の一部更新である。本稿では改変部分の詳細に…

『おいしいコーヒーの真実』で知るドクターイーブルの秘密

『オースティン・パワーズ』が好きなんである。サイケでキッチュな60年代ファッションに身を包んだ登場人物が、007をはじめとしたスパイ映画へのオマージュなストーリーをおバカな台詞で構成するとてもよくできたコメディで、結局DVD-BOXまで買ってしまった…

『私が女になった日』は素晴らしいイラン映画だった

たまに、普段なじみのない国の映画を見るのが好きだ。 こうした国の映画というのは、画面やストーリー展開が予想できないので、自分がいかに普段囚われた思考に陥っているかに気づかせてくれる。普段使わない思考や感情が動かされ、とてもリフレッシュする。…

『ラオウ伝 激闘の章』は九鬼周造である

『北斗の拳 ラオウ伝 激闘の章』を家内と見た。TVアニメ版北斗の拳とは違って大人の映画との評判である。実に「いき」な映画であった。真救世主伝説 北斗の拳 ラオウ伝激闘の章

『プラダを着た悪魔』とジャーナリストという生き方

アタクシも若手の時にこういうボスに仕えたことがあります。 というか、どこの会社にもこういう仕事が出来て部下に理不尽な上司は一人くらいはいるんでしょうね。 でも会社に多いのは、仕事ができないのに理不尽な、プラダを着こなせない「悪魔の手先」って…